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頭の後ろに手を当てがわれて恐怖のあまりぎゅっと目を閉じたが、パチンっと音がするとその手はすぐに離れていった。
「?」
「髪紐の代わりだ。これを使え」
自分の頭の後ろに手をやると何か硬いものに触れた。髪の毛から取って見てみると、花を模した髪留めだった。
「え……? いや、こんなお高そうなの頂けません! 汚したり無くしたりしたらどうするんですか?!」
何がどうしたら、使い古したリボンがこんな髪留めに変身すると言うのだろう。
髪留めに嵌められている赤くキラキラと輝く物が、ガラス玉でも、ましてやその辺に転がっているような石ころでもないのは、物を見る目のないアリシアにだって判別出来る。
「汚れたり無くしたりしたらいくらでもまた買ってやる。だから毎日必ず付けてこい」
「そんな……」
「分かったな?」
仕方なく頷くと、フェルディナンドが前髪の上から額に優しくキスを落としてきた。
「それじゃあ俺はまた会場に戻る。お前もあまり夜更かしするなよ」
「はい……」
フェルディナンドの足音がしなくなると、アリシアはその場にへなへなと座り込んだ。
「何だったの……?」
覗いてくる馬に問い掛けても返事は無い。
しばらくアリシアはぼんやりと、貰った髪留めを見つめた。
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好きな人を前にするとついついイタズラしたくなっちゃうフェル。こんな事ばっかりやってるからダメなんだって、誰か言ってやって下さいw
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