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12. ハンナの馬
クリームのような柔らかい色合いをした月毛の小柄な馬に乗って、ハンナが楽しそうに王宮の一角にある森の小道から歩いてきた。
その前を王太子が、後ろを王太子妃が同じく自分の馬に乗って歩かせている。
「アリシア、ただいまー!」
ハンナに「お帰りなさいませー!」と手を振り返して出迎える。
馬に乗れるようになったハンナは約束通り自分の馬を買ってもらえることになり、アリシアが実家の牧場からハンナに合いそうな子を選んで連れてきた。
父はそろそろ「王室御用達」の看板でも掲げようかと意気込んでいた。
シェレシュと名付けられたこの馬もこちらの環境に慣れてきたので、今日は親子で馬場から出て乗馬を楽しんで貰っている。
ハンナ達は戻ってくると馬から降りて、待機していた専属の厩番たちに手綱を渡しこちらにやって来た。
「シェレシュすっごく気に入ったわ! アリシアありがとう」
「ふふっ、とんでも御座いません。ハンナ様の金色の髪とお揃いの毛色でとても素敵でしたよ」
後から続いてやってきた王太子夫婦に礼をとり挨拶をする。
「お帰りなさいませ」
「いい馬だね、ハンナにピッタリだ。私ももう1頭、君に馬を見立ててもらいたくなってきたよ」
「まあ、あなた。それならわたくしにも買ってくださいな」
「ご用命と有ればいつでもお見立てさせて頂きます」
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