13. 馬を訪ねてどこまでも

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 王宮を出発してから3週間余り。あちらこちらと色んな場所を周りながら、いよいよ国境を越えてサダル王国へと入っていく。  何かが劇的に変わるという事はないのだけれど、何処となくキシュベルとは雰囲気が違う。  歩いている人達のほとんどはもちろんサダル人だけど、キシュベルの人、その中でも取り分け軍人が多い気がする。 「サダルの人ってキシュベル語を普通に話せるんですね」  いくつかの街を通り過ぎて山道に入り、休憩しながら途中の店で買っておいたブレクと言う渦巻きパンを頬張りながら、2人に話しかけた。  ブレクはこの国を代表するパンらしく、チーズや肉が入ったものからジャム入りの甘いものまで色んな種類があった。パイ生地で出来たボリュームのあるパンでなかなかに美味しい。 「属国になってからはキシュベル語を第一言語とするように強制しているからな。サダル語を禁止している訳では無いが、教えられる文字や発行される書物や公文書もキシュベル語。だから若い者ほどキシュベル語を普通に話す」  なるほど。だから年老いた人ほど訛りがきつく聞き取りづらいのか。 「そうな風に母国語を変えるように強要されて、サダル人ってもしかしてキシュベル人を恨んでいたりするんですか?」  普通に考えたら母国語を変えるように言われたら、祖国を踏みにじられたような気分になる。サダル人の集まるところにキシュベル人がヒョイッとはいったらボコボコにされそうで怖い。
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