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最後の時はやってくる。
じわじわと確実に、だが、その場に立たされ、思考し、振り回される人間にとっては唐突に。
「痛い! 痛い! 痛い! 痛い!」
菜摘が叫び始める。
「菜摘! しっかりしろ! 今救急車を……」
僕はスマホを取り出しかける。手が震え、うまく番号が打てない。
「啓くん……」
彼女の弱々しい言葉は、引き続いて発せられた、耳を劈く絶叫に中断される。
皮膚を食い破って、孵化した最初の一匹が飛び出してきた。
(了)
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