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「帰ったよ。頼まれてた……経口補水液」  僕は室内に向けて、そう声をかける。 「ん……」  菜摘は寝室から、そう声だけで返事をするが、それ以上の言葉を紡いだり、起き上がる気力はないようだ。  菜摘の胸は大きく変形し、膨張していた。  彼女の胸にそんな言い方をするのは相応しくないだろう。だが、実際その通りだったのだ。  両方の胸がそれぞれ、妊娠した女性の腹のように巨大になっている。    菜摘は例のサプリを飲んだのだ。それも、当たった試供品の段ボール箱、三ヶ月分を毎日、忠実に一粒ずつ。  一ヶ月ほどで効果が現れ、当初は菜摘は大喜びだった。  二ヶ月になると巨乳の域で、そろそろいいんじゃないか、と僕は言ったのだ。  律儀な菜摘のことだから、それでも最後まで飲みきったのだ。  今では菜摘は、日夜高熱を発して、起き上がることすらできない。  今では彼女の胸は病的な大きさで、あまつさえ、内側でなにかが蠢いているように感じる時すらあった。  かかりつけの個人病院ではいいかげんな検査しかされず、原因は不明とのことだった。  僕はもっと大きな病院で診てもらえと言ったのだが、なぜか菜摘は乗り気ではなかった。とはいえその頃には菜摘の体調も悪化していて、大病院で長時間待った挙句、やっぱり原因不明では彼女も辛いだろう。  そんな経緯で、最後の最後まで、僕は手を(こまね)いているだけだったのだ。
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