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私は門倉先輩と二人で、桜が有名な公園に来ている。
春休み、桜が満開だからと誘ってくれたのは、門倉先輩の方だ。二つ返事で誘いに応じた。今年は暖かくて、例年より満開が早いようだ。
二人で立ち止まって、咲き誇る桜並木を見渡した。
「うわぁ、桜すごいな」
「そうっすね」
「本当に思ってる?」
「あ、バレました?」
私は桜が嫌いだ。門倉先輩にはバレていたようだ。
「写真部だろ、浦崎。カメラは?」
「これで充分っすよ」
ジーンズのポケットから、スマホを取り出して門倉先輩に見せた。
「邪道だな」
「邪道で結構です。最近のスマホはカメラの性能も良いっすよ〜」
私はスマホで門倉先輩の写真を撮った。
「おい! オレの写真を撮るんじゃねえよ! 桜を撮るんだろうが」
「え〜、桜撮ってますよ、ほら」
桜並木をバックに、門倉先輩のカメラ目線の写真を見せた。
「めっちゃカメラ目線じゃねえか。オレを被写体にするなよ」
「え〜、一枚くらいこういう写真があってもいいと思いますけど」
してやったり、と、自然に口元が緩んでしまう。門倉先輩の写真撮り放題なのは、写真部の特権だな。
アングルを変えて写真を撮る門倉先輩の背中を隠し撮りする。
「ほらまた勝手に撮る」
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