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しゃがみ込んで桜を見上げる門倉先輩が、振り向いて私を見上げる。
「え〜、何のことっすか」
仕方ないな、と言いたげな表情を無言で投げてくる。私はクスクスと笑った。
高校に入学して、前から興味があった写真部のドアを叩いた。幽霊部員が五人ぐらいいるらしいけど、他に部員はいなくて、実質門倉先輩の独壇場だった。そこへ私が入部した。
「浦崎も二年になるし、後輩もできるだろうから、これからの写真部を背負っていってくれよ」
「うへぇ、私には荷が重すぎやしませんか? それに本当に後輩入部しますかねぇ」
「浦崎次第だろ」
「いやいや、無理っすよ」
幽霊部員ばかりなので、一応活動している私が仕方なく次の部長になった。
「こんなスマホで写真撮ってるような部長のとこに、新入部員なんて来ますかねぇ」
「だから、ちゃんとカメラ使えって言ってるのに」
しぶしぶリュックからカメラを取り出した。スマホと違って、手にズシリと重みが乗る。
「なんだよ、持ってきてるじゃん」
「そりゃあ写真部ですから」
おぼつかない手元がレンズキャップを落とした。「ほらよ」と何事もなかったかのように、門倉先輩は拾って渡してくれた。
「ありがとうございます」
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