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風の音が花びらをどんどん散らしていく。このまま風が吹き続けば、見頃を過ぎてしまうんだろうな。枝から離れた花びらは舞い上がり、何枚か門倉先輩にくっついていた。
ゆっくりと門倉先輩の手が伸びてくる。
「花びら付いてる」
やわらかい、温かな手が私の頭に付いた花びらを取ってくれた。
「門倉先輩の方がいっぱい付いてますよ」
高鳴る想いをごまかすかのように、私は門倉先輩に付いた花びらを乱暴に払った。
「痛い痛い! 浦崎、オレを雑に扱うなよ」
「え〜、尊敬してる先輩を雑に扱うわけないじゃないっすか」
「マジか、オレ尊敬されてたか?」
笑う門倉先輩に、またひらりと花びらが落ちる。
キリがないんだ。取っても取ってもまた風が運んでくる。門倉先輩のこと、何度も何度も諦めようとして、何度も何度も泣いたんだ。
「門倉先輩」
「ん?」
この人は、私の気持ちに気付いていないんだろうな。本当に今日がきっと最後になる。
また鼻の奥がツンとなる。
「……撮影の続きしましょう」
「そうだな、もう花びら取っても取ってもキリがないよ」
私は自分に付いた花びらを手で払いのけた。でも風がまた私たちの間を吹き抜けていく。何百枚もの花びらを巻き上げて、わずかな花びらが身体にまとわりついていく。
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