Now Is The Time

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それから啓祐は更に細かい説明を受けたものの、ゲームのシステム自体が膨大であるため、この場ですべてを説明することは不可能だと言われた。 基本的に何をしようが自由な世界において、自分たちで模索、検証しなければならない理がいくつも存在するのだ。 最低限の説明を聞いた啓祐は頷く。 「……わかった。やるよ。必ずクリアしてやる」 参加は不本意ではあったもの、説明を聞けば聞くほど、抜け出せないのだという実感が湧いてきた。 そしてクリアした後に、この開発運営をギターでぶん殴り、火をつけて燃やしてやると心に誓う。 「それではそろそろスタートしましょうか。魔法陣に乗ったら、世界のどこかにランダムにスポーンします。 一応、近くに数十名のプレイヤーが同時にスポーンするようになっています。そこで仲間を見つけるといいでしょう」 ふと後ろを見ると、啓祐の後ろの床には幾何学模様の光の魔法陣が出来ていた。照明やLED、プロジェクションマッピングの類ではない。 ナビの立体画面のように、そこに存在する光のエフェクト。 啓祐は席を立ち、恐る恐る魔法陣に立つ。 「菊池さん、必ずまた戻って来るから。その時は……覚悟しろよ」 「はい、それでは気を付けていってらっしゃいませ」 啓祐は魔法陣から放たれた光に包まれた。やがてそれが消えると、啓祐の姿もその場から消えていた。 「ふぅー……」 ここで菊池は大きく息をつき、カウンターの下から水の入ったペットボトルを取り出す。 彼女が水を飲んでいると、先ほど啓祐がやってきた扉から、一人の太った中年の男が姿を現した。 「お疲れー」 「佐藤さん。何か用事ですか?」 突然の男の出現に、菊池は不機嫌そうに返した。 「いやー、ちょっと気になってな」 「くれぐれも私情を挟むのは止めてくださいね。あなたたち上層部の方がコンプラ意識に欠けていますから」 「いやいや、私情を挟んでるわけじゃあない。ちょっとイベントが気になってな。初日はお前が担当するんだろ?」 その言葉を聞いた菊池は、手元のパソコンを確認する。 「何度も言いますが、初日のの発生箇所は乱数ですよ。特定のプレイヤーを避けるように設定はしません」 「そんなことはわかってる。俺が聞きたいのは、ボスキャラに何を設定したかだ。かなり揉めてただろ?」 その言葉を聞いた菊池は、不敵な笑みを浮かべる。 「えぇ、確かに皆さんからは色んなご指摘を貰いましたが、どうせ負けイベントなので、思い切って大胆な設定にしました。 まだ誰にも言わないでくださいね? さすがに怒られるかもしれないので……」 そこには、確かな悪意があった。
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