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それから周囲の者たちは主に二か所へ別れて歩き出した。
彼らがスポーンした地点には、丁寧に木の看板が立てられており、それによると東西へそれぞれ町があるという。東は王都・エラド方面、西は王都・ミレディア方面。
現在地である「風の平原」は、そのちょうど国境付近なのだ。
啓祐はなんとなく東を選び、先に歩き出した集団から少し距離を置きながらついていく。
(プレイヤー総数は5万人。これからあの地点にプレイヤーがどんどん沸いて来るのか、それとも別の場所で沸いているのかはわからない。
いずれにせよ、仲間を作るには実力を付けた方がいい。じゃなきゃ、またさっきみたいに男っていうだけで断られるかもしれない)
啓祐は何気なく後ろを振り返ると、先ほど彼の前でパーティを組んだ、あの男三名と女一名のグループが目に入った。
(こいつら、ついて来んなよ。俺が先にこっち目指して歩いてんのに)
他のグループもまた、男数名に若い女の子がだいたい一人は入っているという構成だということに気づく。
何故どいつもこいつも、若い女の子ばかりを囲うのか。
ヘラヘラした男たちの顔を見て、こいつらは本気で現実世界へ帰る気はないのだろうと思った。こんな状況でも下心を優先してしまう男の性に、ため息が出る。
そこから更に固い土で舗装された道を2、3キロほど歩く。そもそも道がアスファルトでなかったり、電柱などの類が一切見当たらなかったりと、事前の説明通り明らかにインフラが整っていない。
そんな自然豊かな平原を超えると、ここでようやく先に町の影を見た。
啓祐はナビの機能である「マップ」メニューを確認する。
リアルタイムで現在地が表示され、空白のマップは自動的に詳細に描画されていく仕組みだ。
町へ近づくと、ここでようやく町の詳細が描画されていった。
最初の町は「エシリア」と言うらしい。
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