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エレベーターを降りても誰もいなかったから、そのまま手を繋いで歩いた。歩きながら鍵を出して、ダブルロックを急いで開けた。ドアノブを強く引いて碧を先に中に促した。
ドアが閉まり切る前に、碧が力いっぱい抱き付いてきた。
「…どうした?碧」
後ろ手に鍵をかけながら、碧の小さな頭を撫でてやる。
碧がゆっくりと俺を見上げた。細い手が背中を伝う感触。
「…ようくん、…キス…して…?」
う…わ…
潤んだ大きな瞳に、薄く開いた赤い唇。
堪らないな
唇を合わせると、小さな舌が俺の舌を舐めた。
自分の鞄を下に落として、碧の鞄を取ってやろうとするけれど俺から手を離さないから取れない。
仕方ない。鞄ごと抱いていくか。
キスをしながら靴を脱いで、唇を離して碧を抱き上げた。
「…碧、コーヒーは後?」
濡れた目を見つめて訊くと、うん、と頷いて碧が俺の首にぎゅうっと抱き付いてくる。
「ようくん…はやく…っ。も、がまんできない…っ」
耳にかかる甘い声と熱い吐息に俺の体温もぐんぐん上がってくる。
自室に入って碧をベッドに下ろし、まずは靴を脱がしてやる。
フローリングは後で掃除すればいい。
「ようくんようくん、ねえ…っ」
伸ばしてくる碧の腕から鞄を外してベッドの下に置いた。
それからゆっくりと碧を上から眺めながら、その細い身体に覆い被さる。
碧が俺のブレザーに手をかけて脱がそうとしている。
…抱く前からあからさまに欲情してる碧、っていうのも可愛らしいな
碧に促されるままにブレザーを脱ぎ捨てて、赤い唇に口付けた。
碧の熱い手のひらが俺の頬を包み、首筋を撫でて、次はネクタイをほどきにかかる。シュルシュルと衣擦れの音がする。
「…どしたの、碧…」
キスをしながら訊いてみた。
碧が俺の舌を軽く噛んだ。
「…ようくんのせい、…だよ?」
「ん?」
潤んだ瞳に睨まれてぞくぞくする。
「ようくんが、ぼくを…こんなにしたんでしょ…?」
羞恥と興奮に頬を染めて俺を睨みあげる碧の瞳がめちゃくちゃ色っぽい。
やばい
ちょっともう、理性が保てない
碧のブレザーをやや乱暴に脱がしてネクタイをほどく。
ボタンを外して首筋に口付けたら、碧が声にならない声を上げた。
可愛くて色っぽい年下の恋人に煽られて、その細い身体に溺れてしまう。
「…そうだね、碧。…俺のせいだ」
長いまつ毛に縁取られた大きな目を見つめて言うと、碧は安心したように微笑んだ。その、少し幼いような笑い方と、キスで濡れた唇のアンバランスさが妙にそそる。
「ごめんね、なかなか時間が取れなくて…」
ううん、と首を横に振る幼気な様が愛しい。
「愛してるよ、碧…」
キスをしながら囁くと、碧が俺の下唇をその小さな唇で挟んだ。
「…ぼくも、ようくんだいすき…」
桜色に肌を染めて、可愛い俺の碧が呟く。
砂糖菓子みたいな甘い声で。
その声を出す身体がどれくらい甘いのか、ゆっくり確かめさせてもらおう。
まずはもう一度、その赤い唇から…。
ごく稀に、碧から届くメッセージ。
時間を取ってやれなかった申し訳なさと、またあの碧が見られるという少し邪な気持ちが同時に湧き上がってくる。
2人だけの、甘美なる暗号。
ーーー耀くん家でコーヒー飲みたい。
そのメッセージを解読して読み取る意味は…
『僕を抱いてほしい』
了
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