コロんするの卵

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まぐれの百乗、奇跡につぐ奇跡のおかげで俺の行き当たりばったりの無計画大航海は成功し、世界の果ての秘宝を発見した俺はそれを持ち帰り国王に献上した。 今、そんな俺の功績を称えた晩餐会が開かれている。 上座に国王を据え、両サイドに10人ずつ国王の親族や上位貴族が席についている。 俺は左側5番目の席で生まれて一度も飲んだことが無い琥珀色のワインを口に含んだ。 なんだ?ちっとも美味くない、金持ちどもはこんなものが好きなのか? 俺の舌には合わない、とワイングラスを置くと国王が話し出した。 「皆の者、知っての通りそこにいる男が世界の果ての秘宝を発見し余の為に持ち帰ったのだ。皆も今日は彼の功績を存分に称えてやってくれ」 俺の事だ。 さあ、普段は俺の事を虫けらの様に見下す貴族連中が今日は俺の事をどう褒めてくるのか楽しみだ・・・と思ったのに。 「ふんっ!!」 右手最前列の国王の弟が怒りの鼻息を放出した。 国王の弟だけではない。 「けっ」 「へっ」 と吐き捨てる声。 なんだなんだ?動揺し始める俺。 するとバンッ!!とテーブルを叩いて右手9番目の男が立ち上がった。 「国王様、お言葉ながら言わせていただきます。その男は国王様がお認めになる様な男ではございません、クズでいい加減でどうしようもない男なのです。今回の航海はまぐれ、奇跡でこざいます」 なんて本当の事を言うんだ!!と思っている俺に構うことなく次々と他の者も席を立ちだした。 「そうだ!そうだ!」 「その男が出来る事なんて実は大した事ではなかったのだ!!」 「たまたま最初にやっただけでそんな事は誰でも出来る!!!」 完全アウェイ、孤立する俺。 「皆の者静まれ、座るのだ」 国王の一声で一斉に皆が席に着いたが、興奮状態の雰囲気は全く治まっていない。 国王が俺の方を向いた。 「そちの功績をここにいるものは『誰でも出来る事』と申しておる。どうなのじゃ?皆の言う通りなのか?そちの意見を申してみよ」 まずい・・・なんて事を言うんだ王様!!その通りだよ!まぐれだよ!ってそんな事を認めてしまえば俺はまた下級市民に逆戻りじゃないか。 嫌だ!どんな噓八百を並べてでも俺は自分のした事を大義と認めさせてやる。 しかしどうすれば・・・ん? 俺はテーブルの上に用意された「卵かけご飯セット」に目がいった。 そうだ・・・これだ・・・。 「王様、王様はその生卵をテーブルの上に立たせる事が出来ますか?」 「なんじゃと?そんなのは無理に決まっておろう、立たせようとしてもテーブルの上をコロコロと転がってしまうではないか」 「それが私には出来るんです、立つはずの無い卵を立たせられる。誰も出来ない事が出来る。それが私なのです」 俺は生卵を手に取ると思いっきりテーブルに叩きつけた。 ―完―
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