千路子先生

1/1
前へ
/9ページ
次へ

千路子先生

「わ、私が⁉」 「うん、千路子もアパートでじっとしていても色々と溜まってくるでしょ」 「一番溜まっているのはお前と結婚してしまった後悔だけどな」 「うぐっ・・・と、とにかく千路子が小説を書けばいいんだよ」 「む、無理だよ、じ、自信無い・・・」 「イケるって~」 「それにさ、そのコンクールの締め切り明日まででしょ?私タイピングも遅いし、仮に何か書くとしても間に合わないよ」 「ふっふっふ、ならば千路子が言葉で俺に伝えればいい」 「そうか、アンタ、タイピングだけは恐ろしく早かったね」 「だけ、ではない!」 「・・・ま、まあ、原案の一つや二つくらいなら何となくあるけど・・・さ」 「ほら~、その気になって来てるじゃん!千路子ったら、ムッツリ~」 「やっぱりやめた」 「あーーー、嘘嘘!嘘です、千路子先生~!早速取り掛かりましょう!!」 「しょ、しょうがないわね・・・アンタの名前でエブリデイ社にも応募するか・・・」 「何か言った?」 「いえ、何も」 「あ」 「どうしたの?」 「その前に1つだけ確認していい?」 「何よ」 「自分をイケてると勘違いして浮気しているマヌケな夫の話でさ、夫婦両方からの視点で書かれている・・・」 「幸福先生の小説だね」 「やっぱりダメか・・・」 「アンタが初代丸箔利十作(まるばくり とうさく)だよ」 「よ、よせよ」 「褒めてないわ」 「仕方ない千路子!頼む!やっぱりコンクールに向けての最後の切り札はお前だ!」 「ちっとも嬉しくない」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加