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1ヶ月が過ぎた
「た、ただいま」
「あ!おかえり~!!ずいぶん遅かったね。出版社の人とそんなに話をしていたの?」
「う、うん、ま、まあね・・・『処女作でこれだけ書けるなんて凄い』って褒めてもらったよ」
「そうなの⁉へえ~、ま、お世辞だろうけどやはり言われて悪い気はしないわね」
「だ、だね」
「・・・どうしたの?なんかテンション低いよ?」
「い、いや、千、千路子が考えた作品なのにさ・・・世間では俺が書いたことになってるから・・・」
「そんなの気にする性格だったっけ?丸箔利十作の生まれ変わりの癖に」
「い、いや、あ、あははは・・・」
「・・・何を隠しているの?」
「うえっ⁉なななな、何も!!ぜんぜんでんでん隠してないでごわすよ!」
「アンタ・・・エブリデイ小説賞の賞金、どうしたの?」
「どどどどどどうしたの?とは⁉」
「本当は賞金は振り込みなのに、私たちの口座は残金が無くて凍結してるからエブリデイ社さんの厚意で現金を用意してもらったんだよね?」
「うううううう、うん」
「私は書留にしてもらおうって言ったのに、アンタがそれじゃ失礼だから取りに行くって言ったのよね?」
「え、えええ、ええはい」
「で、今日アンタに取りに行ってもらった」
「そそそそ、そうです」
「帰りに家賃と電気代振り込んでおいてと言ったよね」
「いいい、言いました」
「振り込んだよね?」
「・・・・・・」
「・・・噓でしょ、嘘!!どうしたのよ!・・・今日中に振り込まないと電気止まっちゃうし、何よりここを出ていかなきゃならないのよ!・・・ま、まさかまたパチンコ・・・」
「ち、違うんだ!!今日は新台入れ替えの日で、勝つ確率が高い日だったんだよ!!だから僕は元手を増やそうと思って・・・なのに10万突っ込んで1回も当たりが引けないなんて、み、店が悪いんだよ!」
「うわーーーーーーん!」
「千、千路子ごめん。今度こそパチンコやめるよ・・・」
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