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そして一番最悪なのが、偶然のいたずらにより愛垣と霜野に出会ってしまった風花が今、危険に晒されているということ。
ノートパソコンを持つ手に力が入り過ぎて、軋み音がした直後。
「っ!?」
ドレスの裾を洗い終えた風花が、何も知らずに戻ってくる様子が映像に映し出された。
もちろん霜野と愛垣の二人は悪事を悟られないように笑顔で出迎え、特に愛垣は何度も頭を下げて汚してしまった事を詫びている。
“世の中の悪い奴はみんな相手の警戒心を解こうとする”
そう言っていた耀の言葉がまさに表れている場面であったが、今の風花にはそれを思い出すキッカケは一つもなく。
何の疑いも抱かないまま、二人に挟まれる形で元いた席に腰を下ろした。
するとアクシデントの対応で喉が渇いたのか、早速自分のカクテルグラスに手を伸ばした風花がゆっくりと口元へ運んでいく。
耀の血の気が一気に引いていった。
「……くそ!」
突然ノートパソコンを思い切り閉じて苛立ちを露わにすると、7階部分の非常階段にいた耀が一気に数段飛ばしで駆け降りていく。
向かう先はただ一つ、薬物入りのカクテルを今にも飲んでしまいそうな、5階のバーにいる風花の下。
「飲むなよ、絶対!」
自分でも何故こんなに息を切らして、必死に階段を駆け降りているのかわからない。
忠告をしても聞かなかった風花自身が招いたこの状況に、耀がこれ以上関わる必要なんてないのに。
それでも体が、心が。
あの馬鹿女を救えと叫んでいる気がして、走るのを止めてくれない。
「っ……!」
しかしこのままバーに押し入れば、婚活パーティー会場で一度顔を合わせている霜野と愛垣にも自分の存在を知られてしまう。
5階屋内へと続く扉の前でどうするべきか瞬時に考えた耀は、そのドアノブを捻って突入した。
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