海月桜

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胸騒ぎを兼ねた不安は、 一向に収まらず、彼女にもう一度聞こうにも、 春休みに突入してしまって、 会えない。 高梨瑠璃の連絡先に 震える指が、近付こうとしていた。 「090……」 高梨瑠璃の連絡先を、 何かの呪文みたいに復唱して、 ふと、我に返って、スマホを閉じる。 何をやっているんだ僕は。 穏やかに降りしきる春雨が、 僕の部屋の窓を叩き、 その雨音に、漠然と耳を澄ました とある昼下がり。
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