春乱痴気

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 銀二はくれ葉を黒目だけで見上げて、両乳房を持ち上げ、ぎゅっと寄せると両方の先端を舌で転がした。 「痛ぇの好きか?」 「いやだよ、痛いのはいや……」  頭を振り、髪結の男が丁寧に撫でつけたであろう鬢を乱す。 「じゃあ、これは嫌か」 銀二が赤く尖ったのを甘噛みすると、くれ葉が俯き、くうっ、と鳴いた。 「……もっと、して……」 「どっちだよ?」  銀二が笑う。 「銀さんのは痛くない……。あんたにされたら、あたし、なんだって……」  あたし、だって? ただの女みたいな口をききやがる。織日は鼻で笑ってやりたくなった。  そんなことはつゆ知らず、くれ葉は言葉どおり銀二の魔羅も嬉しそうに受け入れた。あんなに太いのに。まぐわいというより折檻のようだと織日は二人の結合部を見ながら思った。  くれ葉が壊れたように銀二の名を呼ぶ。もう気が触れてどうにかなってしまったように。 (男に抱かれたくらいで。)  織日はくれ葉を憎むような気持ちで睨んだ。 (男なんかに抱かれたくらいで、なんだそのざまは。涙なんか偽物だろう? わっちらに真なんかないっていうのに。わっちら遊女に対する真心なんかないっていうのに。その男だって(おんな)じだよ。くだらねえ。気づいてくれよ。)  自由になるのは黒目だけで、しわくちゃのさびれた指に秘所を弄ばれ、乳房を好きにされながら、織日はくれ葉に向かって、無音の叫びを投げつける。しかし、もちろんくれ葉には届かない。  行灯の陰にうずくまった絵師が筆を走らせている。くれ葉の痴態がそこに記されていく。  銀二の視線に気づいた。猛禽類のような眼差しで織日を見つめている。その視線に喰われそうな恐ろしさを押しつけられて、織日はぎゅっと目を瞑った。
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