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「次はどの人にするの?」
朝の通勤通学ラッシュの電車内は、一度で多くの人の所にエッグを忍ばせることが出来る。
でも、エッグの数には限りがあるから、そこは慎重にしないといけないところだ。
「えっとね。
あそこのため息ばっかりついている人と、目の下にクマのある人。
それから、参考書を開いて、ぶつぶつと独り言を言ってる人でしょ。
それからそれから!」
次々に相手を指差して選ぶヒナだった。
私たちの場合、選ぶのは大抵ヒナの仕事だ。
ヒナの目に間違いはない。
私はその代わりに、そんなヒナと一緒に安全に移動することをすごく大切にしている。
「じゃあ、手前の人からいくよ!」
私は腰のポシェットから、先に重りをつけたロープを取り出して、ヒュンヒュンと振り回してから狙いを定めて投げつけると、ロープは手すりの付け根で絡まった。右腕でググッと引っ張って安全を確認してから、
「ヒナ!
おいで!」
そう言うと、
「待ってました!」
と言って、私の左側から全身で抱きついてきた。
それなのに、
「こう言うのはメイじゃなくて、ほんとはイケメンが良いんだけどね……。」
ぼそりと、そんな事を言うヒナだった。
待ってました!
とか言いながら、この言われようね。
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