春とスプリングとラストマン

３

　スプリングを売るためか？

　スプリングと言えば、うちのバネを使ってトランポリン的な製品を造って跳び続ければ、もっと長く移動していられるんじゃないか？　はたまた、靴底にスプリングを仕込んだ靴を開発すれば動き続けられるんじゃないか？　
　会社ではよく、新製品につながる良いアイデアを出せと言われるが、そう簡単には出てこない。なのに、こんな時に限って何故かナイスアイデアが湧き出てくる。
　でもでも、そんなことをして生き永らえても、その製品を買ってくれるお客様が、いや人間がいないじゃないか。

「やっぱり、立ち止まろう」

　そして、冥地(みょうじ)の足は動きを止めた。空を仰ぎ両手を広げた冥地は「さあ、俺を消してくれ。最後の人類(ラストマン)だ」と叫んだ。
　すると天から、短いが心地の良いメロディーが降りてきた。きっと神様のお告げだろう。今回の人類消失を決行した理由をおっしゃられるのかもしれない。

　ＳＤＧｓだとか、パリ協定だとか、自然を、地球を守ります的な取り組みをしているけど、結局は人類がもたらした環境破壊を止められないでいることに対し、神様が怒って人間をこの世界からお消しになったのかもしれない。
　それならば仕方のないことである。真摯に受け止め、神の思し召しに叶おうではないか。

　そう考えた冥地は、耳を澄ました。