2.見えるのか? 見えないのか?

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 話の途中で、電話がかかってきたため席を外していたのだが、それを済まし、戻ってきたようだ。  妃緒が席を立った。本来の話に戻るのなら、自分は邪魔だと思ったらしい。  つかさず、数久が直久の腕を引っ張った。 「直ちゃん、フォローしてきて」 「はぁ? 俺が?」 「あれじゃぁ、かわいそうだよ。お願い」  数久のすがるような目つきに、仕方なく直久は腰を上げた。数の頼みじゃあ、聞かないわけにはいかないしなぁ……と頭を掻いた。  妃緒を探してうろうろしていると、視線を感じて、その方を見る。  すると、階段に腰掛けて、ジッとこちらを見つめている妃緒の姿があった。 「なんだ、ここにいたのか」  そう声をかけると、妃緒は嬉しそうに笑った。  座って、と言うように、自分の隣をたたく。直久は同じように階段に腰掛けた。 「あのさー」  ゆずるや数久と違って、同い年だと思うと、ついタメ口になってしまう。 「ゆずるの言ったこと、気にすんなよ。――つーか、何か? 俺や数は鉛筆かよ! って感じだよな。ワケ分かんねぇーこと、グダグダ抜かしやがってさ」 「いいの。その通りだと思うから。だって、二人の区別がつかないって言うことは、二人の人格、個性を無視していることになるんだもんね。ごめんね」 「……お前、あったまいいなぁ、ああ、そうか!なるほど!そういうことになるのかぁ」  落ち込んでいた妃緒だったが、その明るい声に、思わず吹き出す。 「直久さんって、おもしろーい」 「そうか?」  彼女の笑顔に直久もホッとする。 「でも、いいんですか?」 「ん?」 「抜け出してきたりして」
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