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「うん、僕もそうだよ。それで、さっきから透視しようとしているんだけど、真っ暗になっちゃって、ダメなんだ」
「おいっ。ゆずる。お前はどうなんだよ。見えんのか? 見えないのか?」
「うるさい。パシリは、まず、黙れ!」
ゆずるが、すぅーと目を細める。だが、
「だめだ」
と短く言い放ち、ため息をついた。
聞くところによると、本当ならば、ゆずるは数よりも強い力を持っているらしい。
それはゆずるが、俺らの家である大伴家の本家筋にあたる九堂家の御曹司だからだ。
九堂家は妙な力をもっとも強く受け継ぐ御家なわけで、ゆずるはその九堂家を継ぐようにと定められている。そのため、幼い頃から、完璧に力を使いこなすための特別な教育を受けているのだという。
――な、なんじゃぁい、その教育って! 怪しい。かなりアヤシイ……。
ところが、だ。ゆずるの力はひどく不安定なものなんだと。
都市の一つや二つ、簡単にぶっ飛ばせるほどの力がある時もあれば、全くなくなってしまう時もあるらしい。数の話だと、それは月の満ち欠けに関係があるらしいとか……。
そう言えば、母さんや鈴加なんかも、そんなこと言っていたなぁ〜。
あっ、鈴加つーのは、俺らの姉貴ね。
――まぁ、そんなわけで、ゆずるは、力が弱まった時の依頼は、かならず数を連れている。
数のフォローが必要な程、使いもんにならない状態だからだ。
……ということで、今のゆずるには、数にできなかったことができるわけがなく、ゆずるは舌打ちをした。
「何かご存じですか?」
妃緒に問う。妃緒は頭を横に振った。
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