2.見えるのか? 見えないのか?

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「私も、たぶん両親も分からないです。この扉はずっと以前から開けられていないのですから」  と、ノブに手をかける。 ノブはカチカチと小さい音を立てるものの、一向に回らない。 「何十年も前に鍵をなくしてしまったのだと聞いています。それ以来開かないのです。誰も扉を壊してまで開けようとは思わなかったようで、開かずの扉として放っておかれています」 「ミステリアス〜。――だけど、なんで開けようとしないんだ? 俺なら何が何でも開けたくなるけどなぁ」 「直ちゃん」 「ん?」  直久のご気楽な質問に数久は眉をひそめ、妃緒はわずかに強張った顔になった。 「この部屋は、生け贄にされた少女たちが使っていた部屋だったんです」  ああ、それでか。直久は息を呑んだ。何だかやるせない気持ちで、じっとその扉を見つめる。  しばらくあって、一行はその場を離れた。  それにしても、なんつぅー広い家だ!  1階はロビー、食堂や浴場などの他、オーナー一家の部屋がある。さっきの開かずの扉もこの階だ。2階は客室オンリーで、9部屋。3階もやはり客室が4部屋あり、この4部屋は2階のそれとは比べものにならないほど1部屋1部屋がバカ広い。つまり、とってもイイ部屋なわけだ。  イイ部屋過ぎて、未だかつて、それらを利用した客はいないんだとか。  そのせいもあるのか、掃除が行き届いていないような……。廊下の隅に埃がたまっているし、壁もザラついている。それに何だかカビ臭い。  数久が急に足を止めて廊下の壁に飾ってある絵を指差した。 「この絵は何ですか?」
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