17人が本棚に入れています
本棚に追加
あの子と私、どこが違うというのだろう?
同じ顔。同じ声。
どうして、私じゃないの?
どうして、あの子なの?
私のどこがダメなの?
なぜ?
私は何のために生まれてきたのだろう?
私はあの子の鏡ではない。
私はあの子の影ではない。
私は私。
私はここ。
ここにいるから。
だから、私を見てよ!
どうして私は二人いるの?
どうして?
なんで?
【改ページ】
▲▽
辺り一面が真っ白い。
東京では、ちょいとお目にかかれない銀世界に、思わずバスの窓から身を乗り出した。
「うおおおおおおおおお。すっげぇー。おい、すげぇよ」
そう叫んでから、直久は、彼の双子の弟に振り返る。双子の弟――数(かず)久(ひさ)は呆れたような声を漏らした。
「直(なお)ちゃん、みっともないよ。それに危ないから……」
と、兄の体をバスの中に引きずり戻す。だが、直久は、すぐにその躰を再び窓から乗り出させた。
「大丈夫だって。知ってんだろ? 俺の神憑り的な運動神経の良さを。心配すんなって。――はあ、マジいい眺め。これが本当の銀世界ってやつだな。うん」
などと言ってやると、数久は心の底から呆れ返って、ため息をついた。
彼は、危ないよ、と言う前にみっともないと言ったのだ。だが、そんな言葉、直久には聞こえない、聞こえない。最愛の弟が自分を心配してくれたということだけで、頭が一杯だった。
直久は冷たい空気を目一杯吸い込んで、再び叫んだ。
「走りてぇー」
最初のコメントを投稿しよう!