3.ゆずる、しっかりしろ! 俺に掴まれ!

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   夕食後、数久は、この屋敷に集まった浮遊霊を追い払うのだと言って、狩衣に着替えている。  狩衣つーのは、平安時代の民間服で、動きやすいことから狩り時の服となり、後、公家の普段着になったもの。6位以下の正装でもあるんだ。  現在では神官なんかが着ているけど、それを数が着ているからって、数が神官か何かなのかというと、ちょっと違う。ハッキリ言って、狩衣を着ることに意味はない。  そこを敢えて着るのは、狩衣を着ることで依頼人が安心するから何だってさー。  普段着でヒョイヒョイと御祓いされても、何ら有難味がないというか。本当に祓ってくれたの? って、不安になるんだと。  やっぱり、一般的に神官=和服というイメージが強いらしい。数は、その期待に添っているわけだ。  そんで、浮遊霊というのは、特に悪さをするモノじゃなく、そこら中をふよふよ漂っているだけの霊。  それ自体に意志はなく、何か強い力に引き寄せられて集まってくることが多く、その強い力というのは大抵、悪霊だ。そして、ソレは引きつけた浮遊霊を吸収してますます力を持ち、かなりやっかいなことになったりする。  まぁ、要するに、浮遊霊は害がなくともいないことに越したことはない存在ってことで、まず、初めに追っ払ってしまうってわけだ。  ――ちなみに、ゆずるに言わせると、浮遊霊は雑魚中の雑魚だそうで、消滅させるのなんて、寝ててもできるとか……。
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