3.ゆずる、しっかりしろ! 俺に掴まれ!

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 ……で、数はよく、真っ白くって綺麗な蛇なんだぁ〜とか、人型になると超が百万個付くくらいの美女だよとかって、背景をピンクに染めながら俺に話してくれるんたけど、だ・か・ら、俺にはサッパリ見えないから! 俺の分からない話をする数は、可愛さ余って、憎さ百倍って感じだ。  なぁんてことをグチグチ考えているうちに、回りの空気が軽くなっているのを感じた。    それに、少し明るくなった気もする。オーナーたちも体が軽くなったとか言っているし、相当の量の霊が住み着いていたんだなぁ。  直久は汗だくになっている数久に、タオルを手渡した。 「ごくろー、ごくろー」 「ありがとう」  数久はニコッとしてそれを受け取ると、額を拭いた。 「――ったく、数がこんなにも頑張っているってーのに、ゆずるのヤツ」  ゆずるは気分が悪いとか言って、部屋に籠もっている。勝手なヤツだ。数だって、長時間バスに揺られ、疲れているはずなのにさ。浮遊霊を追い払うってだけでも、すぐに行動してあげるだけで依頼人は安心できるもんジャン。数はそのことをちゃんと分かっているから、疲れた体を引きずってやってのけたのに。  気分が悪いだぁぁぁぁ〜? 一々、貧弱ぶんなってーの! 「――ってわけなんだけど、……直ちゃん、聞いてる?」 「あ?」 「聞いてなかったんだね」  直久がゆずるへの怒りに燃えている間、数久は直久に何か話しかけていたらしい。 「ゴメン、数。ちょっと今、ゆずるのこと考えてた」 「そう……」  ふいっと数久は直久から目をそらす。
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