3.ゆずる、しっかりしろ! 俺に掴まれ!

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「直ちゃん、ゆずるのことで頭一杯だったんだね。それで、僕のことなんか、どうでも良くなっちゃたんだね」    だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜。ちがぁぁぁぁぁぁうーっ。 「違う違う、数ぅ、違うんだ!」  首が引き千切れるってほど、頭を横に振ると、数はくすっと笑った。 「じゃあ、もう一度始めから話すね」 「ああ、うん」  話題転換の早さにやや面食らいながら、直久は頷き、数久の話を待った。その態度良さに満足しながら、数久は話し出した。 「浮遊霊が多くいる時は、霧がかかったように見えなかったモノが、追い払うことで、見えてきたんだ。そうして、本当に見えないところが浮き出て分かってきたってわけ。墨で真っ黒に塗り潰させたかのようにそこだけが全く見えないんだ。そういう所が、三カ所ある」 「三カ所も?」  数久は目を閉じて、拳を口元に持っていく。 「念のために護符をあげた方がいいかなぁ」  護符――要するに、お守りなんだけど。そんなにヤバイ相手なわけか?  数久の言葉にギョッとする。 「おいっ、数ぅ」  パチッと開いた大きな瞳を直久に向けて、 「念のためだよ」  と、笑顔で数久は答えた。そして、直久の手を取り、その手のひらに何やら絵文字っぽいものを指で描いた。 それをオーナー夫婦や、紫緒さん妃緒さんにもやる。それが済むと、 「念のためですから」  と、再び数久は笑顔を見せた。   【改ページ】 ▲▽    その後、時間的には少し早いとは思ったが、ゆずるも数久も疲れが思いっ切り顔に出ていたので、即、 寝床にGOすることとなった。言っとくが、俺はめちゃ元気だぜ。
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