3.ゆずる、しっかりしろ! 俺に掴まれ!

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 思えば、幼い頃はこうして一緒の布団でよく眠ったものだ。中学二年生ともなれば、お互い背も伸びるし、二人で一つの布団では窮屈になってしまった。  もしかしたら、全てのことがこういうことになっていくのかもしれない。  二人は一卵性の双子であり、元々一人の人間として生まれてくるはずだっだモノ。    受精卵の時に一つのモノが二つになることが始まり、ソレはこれからどんどん増えていく。  二人の人間の二つの布団、二つの人生。  生まれた時は二人一緒だったけれど、これからは?  それぞれ別の女の子に恋をして、家庭を持って、一人で死を迎えるんだ。  数は数で、俺ではないのだから、俺とは違う生き方をするのだろう。  急にしんみりとした直久を不思議そうな瞳が窺う。だが、直久であり得ない数久が、直久のこの気持ち知るよしもなく、 「ねぇ、直ちゃん。ゆずるのことなんだけど」  と言って、直久の顔をあからさまに曇らせる。 「ゆずる、明日が力を失っちゃう日なんだ。今日も相当弱まっていたけれど、明日はまるっきり使えないんだ。ゆずるってね、普段、力に頼りっぱなしだから、力が弱まると気まで弱くなっちゃうんだよ。凄く不安みたいで。――だから、直ちゃん。ゆずるのこと、気に掛けてあげてね」 「だけどよ、あいつ、俺のこと、嫌い……みたいだしさぁー」  直久は細切れに、吐き捨てるように言った。 「直ちゃんは、どうなの?」 「……」  
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