3.ゆずる、しっかりしろ! 俺に掴まれ!

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「直ちゃん、あのね。直ちゃんは、自分は何の力も持っていないと思っているみたいだけど。僕たちは双子なんだよ、絶対にそんなことないと、僕は思うんだ。だって、直ちゃんがいるだけで、僕は凄く安心するんだもの。ゆずるだってそうだよ、きっと。――だから、直ちゃんはゆずるを嫌わないでね。助けてあげて」  言いたいことを言うと、数久はすぅーと眠りに落ちてしまった。  勝手なやつだ。俺が自分に逆らえないことを分かってて言うんだ、数は。  何気に酷いことを可愛い顔をして言うんだ。   【改ページ】  ▲▽    一人眠れないまま、どのくらいの時間が過ぎてしまっただろう?  直久は天井を睨みつけたまま、すぐ隣から聞こえてくる数久の規則正しい寝息に耳を傾けていた。  トイレ……にでも行ってこようかなぁ。  ベッドから抜け出したその時、小さい悲鳴のようなものを聞いた。隣の部屋、ゆずるの使っている部屋からだ。 一瞬どうしたものかと考えたが、次の瞬間にはゆずるの元に駆けだしていた。   「ゆずる?」  部屋の中に入った途端、普通ではないものを直久は感じ取った。未だかつて感じたことのない大きな不安に襲われる。鼓動が早くなる。息苦しい。  何だ? この感じ……?  部屋の中を、ゆずるの姿を探して見回した。すると、ゆずるはベッドの上で身を縮ませて座っていた。 「ゆずる?」  声をかけるが、返事はない。近寄ってみると、ゆずるはガタガタと何かに怯えるように震えている。  信じられなかった。ゆずるが恐怖に身を震わせているなんて。  つい先ほど数久に言われた言葉が脳裏に浮かび上がった。
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