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守らねば! 守ってやりたい。
こんな感情をゆずるに対して抱いたのは、コレが初めてだった。
「な、直久」
ゆずるが直久に身を寄せてきた。
「誰かが見ている」
押し殺したような声を直久の耳元で出す。
「目がたくさん……ある」
どうやら、ゆずるには、この暗闇のいくつもの目玉が見えるらしい。
「俺を捜してる。今のところ、結界を張っているから、奴らには俺の姿が見えないけど、それも直に消える。俺の力がどんどん失われていくのが分かるんだ」
ゆずるは頭を抱え込んで、ますます身を縮めて震わせた。その様子を見ていて、居たたまれなくなった直久は、考えるより自然に体が動いていた。ゆずるを隠すように、その身に覆い被さった。
「大丈夫だ。結界が消えても、俺がお前を奴らから隠してやる」
普段は、直久に触れられることをひどく嫌うゆずるだったが、この時ばかりは何の抵抗も示さなかった。
こいつ、いつもこう素直なら、結構可愛いのにさ。
さすが、いとこ。数や俺と似た顔立ちだし。髪なんかもサラサラだ。躰の線も細いよなぁ。
数も細いけど、なんか、もっと……。
「消える」
「え?」
突然のゆずるの言葉に聞き返した時だ。
プツ。
糸が切れたような音だった。やっと聞き取れるような音で、それが結界が消えた音だと分かるまでに数秒の時間が必要だった。その途端、ひどい目眩がして、空気が重くなった。
何かいる。そうハッキリと直久は感じ取った。
何人もの人の気配。
いる!
ゆずるをしっかりと抱き寄せると直久は辺りをゆっくりと見回した。
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