4.はあ? そりゃあ、うそだろう

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 で、俺らはオーナーの案内で朝っぱらから山登りよ! いや、べつにね。俺は日頃鍛えてんじゃん。  だから、山登り、全然OKなわけ。朝っぱらだろうが、雪道だろうが、いいぜ、べつにぃ〜。  じゃあ、何が気にいらねぇーのか、って言うと。あれよ。ゆずる。  なんつーか、不機嫌な奴が側にいて、そいつが、ぶう〜たれてるとさ、こっちまでムカついてくるんだよなぁ。しかも、ゆずる、歩き方がめっちゃ危なっかしいし……。  ほら、また躓いた。  思わず支えようとして出した腕を、直久はあわてて引き戻した。その手を、まじまじと見つめる。  何やってんだか。  ――顔はかわいい。認めよう。だけど、性格は最低だ。素直じゃないし、足癖悪いし、高飛車だし……。  ゆずるに対する文句をブツブツ言っている横で、数久が不意に声を発した。 「ゆずる辛そうだね」  先を歩くオーナーやゆずるには聞こえないくらいの小声だった。 「だったら、おいて行きゃぁ良かったんじゃねぇ? 」 「それはダメ。あの家においていくなんてできないよ。だって、ゆずるは今、力が使えないんだよ。そんな時、もし、何かに襲われたら」 「ひとたまりもねぇな」  数の話では、普段巨大な力を収めているゆずるの体は、その力を失い空っぽの状態になった時、霊だの妖怪だの悪魔だのに、狙われやすいのだという。  つまり、昨晩のアレもそういうことだったのだろう。  霊とかが人間の体を欲して憑いたり、乗っ取ったりするのはよくあることだが、それをやられた人間は長いこと生きていられない。まず、精神面で滅び、すぐに死んでしまうらしい。
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