4.はあ? そりゃあ、うそだろう

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 いきなり平安時代まで話が飛んでいってしまい、直久は気の抜けた声で返事をした。  ――陰陽師だとか、安倍晴明だとか、いったい何の関係があるんだ? 「数年前、占いブームになった時、安倍晴明が注目されたから、彼についてはそこそこ知っている人が多いけど、陰陽師=安倍晴明みたいに思い込んじゃっている人がほとんどなんだ。だけど、陰陽師っていうのは、仕事の一種なわけでしょ。だから、彼の他に何人もの陰陽師がいたわけ。それが、彼一人の影に収まってしまうほど、彼は強い力の持ち主だったんだ」  数久はいったん言葉を句切った。足下の雪に目を落とす。 「彼の影で、歴史の波に呑まれ、消え去っていった陰陽師たちの中に、大伴泰成という人物がいたんだ」 「おおとものやすなり……。聞いたことがある気がする」 「そりゃ、僕たちの御先祖様だもん」 「マジで? あべのなんとかぁ〜と言う奴に力負けして、忘れ去られちゃった奴が?」 「そうだよ。だけど、僕たちの御先祖は他の陰陽師たちみたいに、晴明の影で黙っているような人じゃなかったんだ。彼は晴明と同等、ううん、それ以上の力を手に入れようとして、様々な鬼たちと契約したんだ」 「契約? 鬼と?」 「自分の死後、自分の体を捧げるから、自分の式神になれ、ってね」 「体を捧げるって?」 「鬼とか、妖怪たちの中にも、性格の違いがあるんだけど、大抵、捧げられたら、食べるよ」 「食べる……?」
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