4.はあ? そりゃあ、うそだろう

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「これは余談だけど、彼が亡くなった瞬間、その死体が、髪の毛一本残さず消えちゃったんだって。つまり、彼に使役されていた鬼たちが契約通りに持っていったからなんだ。ある鬼は右腕、ある鬼は左足みたいに、彼の死体からもぎ取って」 「うげっ」 「――話は戻るけど、より強い式神を手に入れるために、より強い鬼を探していた彼は、ある時、一匹の雌妖狼と出会ったんだ。その妖狼は真っ白い毛並みの、本当にきれいな狼だったんだって。そして、まぁ、いろいろあってね。彼はその狼との間に女の子を儲けたんだ」 「儲けたって。狼だろ?」 「人間と獣の結婚って、よくある話だよ。中でも狐の例が一番多いね。人間に化けた狐と、そうとも知らない人間の獣婚の話、昔話とかになって語られてるでしょ」 「マジでぇ?」 「とにかく、その生まれてきた女の子の名前は小夜といって、彼女が生まれた時にはすでに晴明は他界していたわけだから確かじゃないけど、おそらく小夜の方が強い力を持っていたと言われているんだ。――もっとも、そんなことを言っているのは、うちの家だけだから、ますます分からないけど」  と言って、数久は肩を竦めた。 「幼い頃、小夜は泰成ではなく、母狼に九匹の兄姉たちと共に育てられたそうだよ。そして、成人後、泰成に都に呼ばれたんだ。そこで、巫女として活躍した彼女は、九匹の妖狼を式神に持っていたことから、九狼の巫女と呼ばれるようになったそうだよ。九狼――その『くろう』という音がいつの間にか『くどう』になって、『九堂』になり、それが本家の姓となったわけ」  直久は頭を抱えた。 「ちょっと待て。消化不良って感じ」
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