4.はあ? そりゃあ、うそだろう

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 ゆずるが怠そうに答えた時、辺りを散策していた数久が小さく声を上げた。 「どうした? 数」  皆は数久が指す場所に目をやる。そこには、薙ぎ倒された柵の残骸があった。 「最低」  人が余裕で通れるほどの穴があいてしまった柵を目にして、ゆずるはその場にしゃがみ込んだ。 「結界が張られている気配がしなかったから、おかしいなと思って。やっぱり、破られていたね」    苦笑しながら、数久は、どうする? とゆずるを振り返った。 「誰が結界を破ったのかというのは、後で考えるとして、せっかく破られているのだから行ってみよう」  そう言って腰を上げたゆずるを、オーナーはギョッとして制した。数久はふんわりと微笑む。 「大丈夫ですよ。ここの主はすでに出ていってしまったようですし。オーナーは先に戻っていてください。ここから先は僕たちだけで行きますから」  オーナーは止めても無駄だと知ると、気を付けてくださいと言い残し、来た道を下っていった。  それを見送ってから、三人は柵を跨いだ。   【改ページ】  ▲▽    鳥居をくぐった先は、雪が特に深く積もっていた。歩きづらい。腰の高さまで埋まるのだ。 「数、何とかしろ」  いい加減限界なのか、ゆずるは雪の中にうずくまった。顔色がひどく悪い。  普段、これほど歩くようなこともない上に、1メール先のペンを取ることにさえ力を使うゆずるだ。  この山道は、かなりしんどいに決まっている。  数久は進行方向に向かって、空中に何やら文字を描いた。目を閉じてブツブツ何かを言ったと思ったら、かっと見開いて両手を広げる。
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