4.はあ? そりゃあ、うそだろう

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「そうだね。じゃあ、椿は?」 「椿は不気味って感じじゃあないだろ? 確か花言葉も、赤い花の方は『美しい』だし、白い花の方は『可愛い』だ」 「……花言葉なんて、よく知ってるね」 「物知り博士、直ちゃんと呼んでくれ!」 「……でね、直ちゃんが映画の例を出してくれたから、それに合わせるけど、人が死ぬ瞬間を表現するのに使われやすい植物、それが椿の花なんだ。椿の花って、咲ききると花の部分がそのままの形で落ちるでしょ。ポトリって。その様子がまるで、首が落ちるみたいだって言うんだよ」 「誰がーっ!」 「知らないよ。昔から言うの。――で、その椿の花が落ちるシーンがあったら、死んだんだなぁ、と思うわけね」 「首かよ」 「しかも、血で赤く染まった首」 「ひぃぃぃぃぃぃ。想像したら怖くなってきた。だってよ、落ちてる花一つ一つが首だと想像して……」  どぇぇぇぇぇぇ〜、と叫び声をあげた直久に数久は苦笑した。 「やめなよね、そういうこと想像するの」 「どうせするんなら、美人のお姉ちゃんの裸体にしろ、ってか?」 「そんなこと、言わないよ」    それから、ぐるりと社の回りを歩いたが、これと言って気になるモノを発見できず、三人はペンションに戻ることにした。 「やっぱり、仮にも神様だったからかなぁ。透視できなかったのって」 「そうかもな。生け贄を捧げられていた程だ。よほど力を持ったヤツなんだろうな」  力を失っているゆずるには分からないことだったが、数久は誰もいないはずの場所から絶えず何者かの気配を感じていた。それはおそらく、社の主である『神』の残像に違いない。
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