4.はあ? そりゃあ、うそだろう

12/13
前へ
/95ページ
次へ
「そんなヤツを相手にするとなると、やっかいなことになる」  直久を不安させるようなセリフを、ゆずるが吐いたところでペンションに到着。  早っ! ――と言うのは、はいっ、と差し出された数久の手を直久がおずおずと握ると、数久は直久とゆずるの手を強く握り、そのまま瞬間移動したからだ。  あっという間にペンションだよ。ありかよ、こういうの!行きの苦労は何だったんだ!  ……だけど、この瞬間移動は一度行った場所にしか行けないらしい。しかも、すっげぇ疲れるとか。  へた〜と座り込んだ数久を、ゆずるは肩をすくめて見下ろした。 「無理すんな、ばか。数がへばっている間に何かが襲っていたら、どうすんだよ?」 「でも。ゆずる、辛そうだったから……」 「馬鹿っ!」  一度目の『ばか』とは異なり、二度目のそれは、本気の怒鳴り声だった。 くるりと背を向けたゆずるは、明らかに怒っている様子だった。ゆずるはプライドが高く、人に気を遣われることを最も嫌っていた。 「ごめん」  即行で謝った数久だが、それは更にひどくゆずるの気に障ったらしい。ゆずるは、無言でペンションの中に入って行ってしまった。苦笑いで、数久は直久に振り向いた。 「怒らせちゃった」 「いいんじゃねぇの? 放っとけば」 「そういうわけにもいか……」  突然、言葉を切った数久に直久は怪訝な顔を向ける。 「どうかしたか?」  数久はペンションの三階の奥の方の部屋の窓をじっと見据えている。 「今、あそこから、誰かがこっち見てた」 「え?」 「あの部屋って、確か、舜さんの部屋だよね?」 「そうだな」
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加