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すると、舜は本当に存在する人物だったのだろう。数久は胸を撫で下ろし、直久の言葉を継ぐ。
「妃緒さんに、お兄さんだとお聞きしました。」
「妃緒に?」
双子がそろって頷くと、観念したかのようにオーナーは、ぽつりぽつりと話し出した。
「――はい、舜は紫緒と妃緒の兄です。とても、妹想いの優しい子でした」
過去形で言い切られた言葉に、直久も数久も嫌な予感がする。
「紫緒があのように――魂が抜かれたようになってしまって、すぐのことでした。舜は紫緒を助けてやろうと、山に登ったのです」
「山に?」
直久は聞き返した。
「今朝登った山ですよね? 生け贄が捧げられたという」
聞き返すと言うより、念を押すように数久が言うと、オーナーは深々と頷いた。
「おそらく、山の神に頼みに行ったのでしょう。ですが、その日は登山を妨げるような激しい吹雪で、皆が止めるのも聞かず出かけた舜は、そのまま戻ってきませんでした。翌朝、吹雪が止み、捜索隊が山に入り、舜の亡骸を見つけてくれました」
「亡骸……」
――死体ってことだよなぁ〜。死体ってことは死んでいるってことだから……。
直久は、間抜け過ぎる言葉の変換を頭の中でする。
――死んでいるってことは、生きてないってことで、あの3階の部屋にいるってーのは……?
うそ?
「あのう、舜さんは生前、3階の奥の部屋を使っていましたか?」
「3階?」
数久の問いにオーナーは怪訝な顔をする。
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