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「3階は全て客室になっていますが。ほとんど……というより、全く使用しておりません。妻が時々掃除をするくらいで、普段は上がることもないですよ。ないものだと思っているくらいです。それに、舜の部屋は1階にあります」
双子は顔を見合わせた。妃緒が何らかの理由で偽りを言ったことは明らかだった。
「じゃあさー、足は?」
「足?」
「生まれつきの奇病で歩けないと聞きました」
「奇病? 妃緒がそんなことを言ったのですか?」
今度はオーナーと奥さんが顔を見合わせる番だ。
「そのようなことはありません。一人で山に登るくらいですから」
きっぱり言い切ったオーナーの言葉に、なるほどと直久は思う。
吹雪の中、車椅子で山登りは無理だ。いや、吹雪じゃなくても無理っぽい。じゃあ、なんで妃緒は奇病だなんて言ったのだろう?
そして、なぜ、あの部屋に舜がいるだなんて言ったのだろう?
あの部屋に何があるというんだ?
オーナーは少し考えて、再び口を開いた。
「そういえば、舜の亡骸は損傷がひどかったのです。首の骨が折れ、肋骨も数本折れ、内臓に突き刺さっていました。腕はあり得ない方向に曲がり、特に足はひどく、両足が膝より少し上で千切れていました。千切れた足の骨は、粉々に……。おそらく、足を滑らせ、上の方から転がり落ちたのだと思います」
淡々と語るオーナーに対し、奥さんは堪らず、口元を押さえてその場からそっと離れた。
台所からすすり泣く声が静かに響いてきた。
「――さらにひどい話に、舜の亡骸は消えてしまったのです」
「消えた?」
「少し目を離した隙に」
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