5.数ぅ〜。早く助けてくれよぉ〜

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 そう言って、オーナーは口を閉じた。これ以上何も聞き出すことが出来ないと二人は判断して、席を立った。 「……すみません」  淡々と話して見せたオーナーだって、この話は辛いはず。  数久が謝罪すると、彼はゆっくりと首を横に振った。 【改ページ】  ▲▽    食堂を出た双子は、どちらかが提案したわけではなく、自然とそこに足を向けた。一段一段、足を進めて行くにつれ、気が重くなった。  妃緒の意図が見えない。   なぜ嘘などついたのだろう?   最後の階段を上がり、3階にたどり着いた。少女たちの肖像画が飾られている廊下が長く続く。 「あの部屋だよ」  低めの声で数久がささやいた。言われるまでもなく、廊下の先にあるその部屋は不気味に存在していた。  ドライアイスに似た霊気が、その扉から漏れ出ているのが見えた。  ふと思うことがあって、足を進めようとした数久を直久が止める。 「何?」 「話したと思うけどさ。昨日の夜、俺、見たんだ」 「何を?」  要領を得ない直久の言葉に、数久は眉を歪ませた。 「女だよ。髪の長い。あと、手とか」 「ゆずるを襲った霊? ああ、言ってたね」 「あとさぁ、気配とか感じんの」 「気配?」 「今だって、あれ、見えるし」  と、霊気を顎で指す。 「見えるの?」 「灰色っぽい」 「本当に見えているんだね。どうしたの?」 「俺に聞くなよ。俺が聞きたい」 「……だよね」  今まで、まるっきりの常人だった直久が、いきなりどうしたんだろう? 数久は首を傾げる。 「とりあえず、そのことは後でゆっくり考えよう。お祖父様に聞いた方がいいかも」 「じじいに?」
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