5.数ぅ〜。早く助けてくれよぉ〜

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 俺らの間で『お祖父様』なぁんて、ご大層に呼ばれる人物はただ一人、母方の祖父のことだ。  ゆずるとの共通の祖父であり、つまりは、我が家の当主だ。 「何でそこで嫌そうな顔するかなぁ? お祖父様に一番可愛がられているのって、直ちゃんでしょ」 「ばばぁには、嫌われてるけどな」 「そんなこと……」  ないとは言い切れない微妙な事実あった。祖母は、なぜか直久を自分から遠ざけようとする。恐ろしいものを見るような目で。 「――とにかく、その話は後にしようね」  そう答えたものの、腑に落ちなかった。双子は、柔らかい絨毯が敷かれた廊下を進んだ。  埃臭さとカビ臭さが戦っているようなひどい臭いがする。壁に手をやると、ザラリとした感触ある。  時々掃除をすると言っていたが、本当に時々なのだろう。  ふいに、例の扉を目の前にして、直久は足を止めた。気配でそれに気付き、数久が振り返った。 「どうしたの?」 「動けねぇー」 「え?」  直久は顔を引きつらせ、硬直している。 「何、遊んでるの? こんな時に」 「遊んでない、遊んでない。マジ動けないって。蜘蛛の巣に引っかかった蝶々って感じ。もしくは、ゴキブリほいほいに捕まったゴキブリ」 「たぶん、直ちゃんなら後者だね。ちょっと待ってて」  数久はすうーと目を細め、直久の回りを見る。 「結界が張ってある」 「結界?」 「それも捕獲用の……」 「なんだそれ?」 「簡単に言うと、罠みたいなもの。悪霊とか妖怪専用の罠だから普通、人間は掛からないはずなんだけど」 「なんで俺、掛かってんだよ!」 「さぁ〜」  直久は当然ながら、数久にだって、わけが分からない。
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