5.数ぅ〜。早く助けてくれよぉ〜

8/13
前へ
/95ページ
次へ
「数ぅ〜。早く助けてくれよぉ〜」  情けない声を出す直久に申し訳なさそうに数久は頭を振った。 「結界を張った本人にしか解けないんだよ。あとは掛かった者が結界を張った者の力を上まる力で破るか、第三者が圧倒的な力で破るか……。さっき直ちゃんが蜘蛛の巣に掛かったゴキブリみたいって言ったけど」 「ゴキブリじゃなくって、蝶」 「それにしても、ゴキブリって蜘蛛の巣に掛かるんだろうか?」 「……って、聞いてねぇーな、おい」 「それについての議論は置いといて、つまりね、第三者が結界を破るには、例えば、人間が蜘蛛の巣を破るくらいの力の差が必要なんだ。蜘蛛と人間くらいの差だよ。絶好調のゆずるなら何とかなるかも知れないけど、今、絶不調だし、僕には無理。この結界を張った人かなりの力の持ち主だと思うよ」 「じゃあ、どうすんだよ!」  直久は大声を張り上げた。  その時、ギィィィィィィ、と耳の痛い音を響かせて、数久の背後で扉がわずかに開いた。数久は弾かれたように振り返って、身構えた。直久も目を見張る。  開いた扉から、キイキイという車輪の音がする。次第にその音は近づいてくる。 「妃緒ちゃん?」  恐る恐る呼びかけるが、返事はない。扉のすぐ側まで音がたどり着いた。そして、今度は大きく開いた。  ギィィィィィィィィィィィーーーー。 「!」  ぶわっ、と冷たい霊気が二人を襲う。鳥肌が立った。だが、不思議と恐怖はない。  こんなにもものすごい霊気を放つ相手を前にして怖いとか、恐ろしいとかいう感じがないのだ。  直久も数久も開け放たれた扉の先にいる人影を見据えた。姿を現せた人物は車椅子姿の青年だった。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加