5.数ぅ〜。早く助けてくれよぉ〜

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 紫緒さんに似た雰囲気を持ったその青年は、結界に掛かった直久を見上げて、ふっと笑った。 「意外なモノが掛かったな」  そう言うと、すっと手を挙げた。途端、直久の体は自由になり、がくっとその場に膝をついた。それを見て、数久はその人物を睨む。 「あなたがあの結界を張ったんですか?」  言葉遣いは丁寧だが、めずらしく怒っているようだ。 「あなたは何者ですか?」  問いつめる数久とその人物の間に少女が入り込んできた。妃緒だった。妃緒はその人物を守るように両手を広げ、数久を睨んだ。 「私のお兄ちゃんよ」  その妃緒の言葉に耳を疑う。 「お兄ちゃん?」 「お兄さんって、舜さん?」  直久と数久は信じられないものを見るかのように、妃緒の肩越しにその人物とを見つめた。  美形と言うのに相応しい繊細な造りの顔立ち。痩せすぎではないが、線の細い体つき。色白い肌。紫緒さんの時もそう思ったが、生きている人間っぽくない。人形みたいだ。  この人が舜さん?  車椅子に座った彼の体には、やはり足がなかった。膝上から千切れている。 「舜さんは亡くなったって……」 「お兄ちゃんは死んでない! ここに、こうしているじゃない!」  確かに彼は動き、言葉を話した。だが、オーナーは言ったのだ。舜は死んだのだと。  数久はその人物をじっと見据え、もう一度くり返し問うた。 「あなたは何者ですか?」  すると、彼は妃緒の腕を引き、その身体を自分の方に寄せると、彼女にふわっと微笑んだ。 「妃緒、彼らと話がしたいんだ。部屋の中に入って待っていてくれ」  妃緒が渋々といった感じに部屋に戻って行くのを見て、直久が唸る。
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