5.数ぅ〜。早く助けてくれよぉ〜

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「てめぇーの正体は妃緒ちゃんには内緒ってわけか?」 「彼女はこの体の本当の持ち主のことを慕っていてね。吾をそいつだと信じて、まとわりついてくる。それが何とも言えず可愛くてな」 「ばれたくないってわけか。で? なんなんだ、てめーはよ」  彼は、ふっと不敵に笑った。 「ここの人間は吾を山の神とか呼ぶ」 「山の……」 「……神?」  思いがけない答えに一瞬あっけにとられた直久と数久だったが、すぐに我に返って、更に問いかけた。 「結界なんて張ってどうするつもりだ?」 「この家で悪さしている霊を捕まえようと思ったんだよ」 「霊を?」 「長い黒髪の少女だ」 「なぜですか? あなたには関係がない」 「関係なくはない。贄を捧げられた以上それに答えないとならんからな」 「贄?」 「この体の命だ」  舜さんは山で絶命した。そのことによって、本人の意思とは関係なく、生け贄になってしまったのだ。  過去、生け贄となった少女は村の繁栄を願って死んだ。そして、この神はそれを応えた。  舜は紫緒の案じて死んだ。だから、この神は紫緒のためにこの家に取り憑く悪霊を捕らえようとしている  のだ。 「なるほど。よぉく分かった。だがな、俺がその結界に引っ掛かったっていうのはどういうことだ?」  直久の剣幕に彼はすうーと目を細めた。そして、 「君は体内に何か飼っているな」  と言う。 「は?」 「どういう事ですか?」  神と聞いて警戒を解いた数久の言葉遣いは柔らかくなっている。 「そちらの君も飼っているだろう。君たちは式神と呼んでいたかな?」 「直ちゃん……兄にも式神が?」  確かに数久の式神、雲居は普段数久の中にいる。
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