5.数ぅ〜。早く助けてくれよぉ〜

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 いると言っても正確に何処何処にいるとは言えないが、運命共同体ごとく常に数久の側にいる。  もっとも、式神の所有の仕方はそれ一つではないが。  多く式神を所有する者などは全ての式神を体内に入れておけないので、石など物体の中に入れておいたり、必要としている時だけ呼び寄せるなど形を取る。  どれにしても、式神は一度対峙したことのあるモノではないと、己のものにはできない。数久だって雲居を式神にする時、いろいろと苦労したのだ。  気が付いた時には式神でしたという生易しいものではけしてない。それなのに、直久は己自身さえの気が付かないうちから式神を所有していると言うのだろうか。  だが、舜の頭は横に振られる。 「式神なのではない。人間に服従などしそうにもない邪悪なものだ」 「なんだよ、それ?」 「分からない」 「そんなモノが体内にいて、兄は大丈夫なんでしょうか?」  不安げに尋ねた数久に彼は優しく笑いかけた。不思議と落ち着いた気分になる。 「今のところはな」 「今のところ?」 「どうやら封印を施されているようだ。だが、解けかかっている。ごくわずかだが、妖気を感じる」 「妖気?」 「そう。おそらくそのために吾の結界に掛かったのだろう」  愕然とする。  はい、そうですかと聞き流せるような話ではなかった。 「その封印のために、君の本来の力が発揮できないでいるようだ」  追い打ちをかけるように言葉が付け加えられた時、ゆらりと目の前の空間が歪んだ。【改ページ】 『主殿』  すうーっと姿を現せたのは雲居だった。平安時代の姫君を思わせる着物姿だ。
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