5.数ぅ〜。早く助けてくれよぉ〜

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 だが、本来鮮やかであるその着物姿は彼女の長く流れる銀髪のために、全体的に白いイメージが強い。  数久がいつも自慢するように確かに絶世の美女ではあるが、どこか冷たい感じがする美人である。  数久は雲居から知らせを受けて、見る見る青ざめる。 「ゆずるが危ない」  そう言い放つと、ぱっと姿を消した。瞬間移動したのだと気付くまで直久は時間を有した。 「君らはそんなこともできるのか。大したものだ。……だが、苦戦しているようだな」  直久は数久を追って駆け出そうとした。だが、舜がそれを止める。 「この方が早い」  彼はそう言うと、すっと片手を挙げた。  どさっ。突如、もつれ合うゆずると数久の身体が直久の目の前の空間に現れた。  直久も土肝を抜かれたが、現れた本人たちも状況判断が付かず、間抜けな顔をしている。  呆然としたまま転がっている二人に彼はうっすら笑って、 「早く起きあがった方がいい」  と、真っ直ぐ廊下に先を指差した。三人がそちらに目をやると、その場所の床が盛り上がっている。  その盛り上がりは徐々に大きく膨らむ。嫌な予感がした。  ぬうーとその盛り上がりが顔を見せる。頭だったのだ。  頭に続き、肩、腹、腰、足が現れた。黒髪は異常に長い。足首を越す。  昨夜ゆずるを襲った悪霊だと直久は確信した。ゆずるを追ってここまで来たのだ。  少女の霊は完全に床を通り抜けると、その身体を数センチ浮かせて、滑るようにこちらに向かって来た。   直久は指示を仰ごうと数久を振り返った。が、数久は今朝のといい、さっきの瞬間移動で力を使い果たしてしまったようで、青ざめた顔を返してくるだけだった。
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