6.いま何年? 何年何月何曜日? ついでに何日?

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「俺、アヤメさんを救いに来たんだ。だから困っていることない? 俺を助けるっと思って何でも言ってくれ」 「はぁ?」  アヤメは怪訝な顔をする。 「何それ。いったい、どっちがどっちを助けるのよ? ――それに、私、全然困ってないから。助けるのなら、ツバキの方でしょ。ツバキ、明日生け贄にされちゃうのよ。きっとツバキの方が救われたがっているわ」 「でも、泣いていたのは君だから」  直久の言葉に、アヤメの顔がカーと赤くなる。 「泣いてないわ!」 「君を、アヤメさんを助けたいんだ。必ず守るよ。例え、どんなものからも。だから、なんで泣いていたのか話してくれないかな?」 「泣いてないってば!」  アヤメは直久に背を向け、つかつかと歩き出す。  例の、妃緒が舜の部屋だと言い張った部屋に入ると、直久の目の前でバタンと音を立てて扉を閉めた。 「ちょっ、ちょっとアヤメさーん。開けてよぉ〜。俺、どうしたらいいんだよぉ〜っ」  しばらく直久の間延びした声が廊下に響いていたが、その後、再びパタンと扉が閉まった時には、直久の姿はそこからなくなっていた。   【改ページ】 ▲▽   「直久!」 「直ちゃん、しっかりして!ねぇ、直ちゃん!」  直久の身体は、ゆずるの腕の中でぐったりと横たわっている。 その顔は血の気がなく、蝋人形を思わせるほどに青白い。次第に冷たくなっていくその身体を、ゆずるは暖めるように力一杯に抱きしめた。 「なんで! なんで、俺の前にっ。この馬鹿!」  自分と直久が仲良しとは、けして言えなかったはず。――いや、それどころか、嫌われていたはずだ。  ……なのに。なぜ?
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