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「数、すぐに直久から悪霊を引き離せ。お前のポリシーなど聞かない。強制除霊しろ。抵抗したら、消滅させてしまえ!」
ゆずるに頷いて見せた数久だったが、霊を祓うだけの余力などなかった。 数久の頬を汗が伝う。それでも、できないなどと、今のゆずるに言えなかった。
数久が小刻みに震える手で印を結ぼうとした時、舜がそれを制した。
「やめておけ、今の君には無理だ。下手に霊を刺激すると、事態はよけいに悪化する」
そこでようやく、ゆずるは彼の存在に気付いたようで、彼を睨み付けた。
「黙れ、部外者が口を挟むな」
「ゆずる、この方は山の神だよ」
「それがどうした? 俺は九堂家次代当主だ。そこらの神々よりよほど強い力を持っている。昔、生け贄を捧げられていたらしいが、だからなんだって言う? それで、その程度の力か?」
「ゆずる、口が過ぎるよ!」
「いや、いい」
青ざめた数久に舜は柔らかく微笑んで、ゆずるに細くした目を向ける。
「なるほど、九堂家の方であったか。霊がその身体を器にしたがるのも分かる。だが、確かに九堂家の次代ならば、そこらの神々――吾などよりも強いであろうが、そなた、まことに次代か? 汚れた血の臭いがする。そなたはおん……」
「黙れ!」
顔を赤らめ、舜の言葉を遮るゆずる。
「それ以上、口にすることは許さない!」
肩で荒々しく息をするゆずる。舜はゆっくりと首を横に振った。
「何か訳があるようだ。ならば、聞くまい」
舜はゆずるの腕の中の直久に目を移す。
「そなたが次代ならば、知っているだろう? 彼は体内にいったい何を飼っているのだ?」
「……」
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