1.またずいぶんと現実、いや、現代離れした話だなぁ

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 て落ちねぇ奴はいない。激! マジ! かわいいのなんのって。  ふと、数久が空を見上げながら、口を開いた。 「日が落ちる前に着かないとね」  曇り空で、太陽の位置がよく分からないが、だいぶ薄暗くなってきている。 「嫌な感じが、どんどん強くなってきているね。だから、もうすぐ着くと思うよ」  ほとんど独り言のように言った数久に、少し遠慮気味に直久は尋ねた。 「ところで、今回はどういう依頼なわけ?」  嫌な感じと連発されると不安になるではないか。 数久はゆずるの表情をちらりと盗み見る。 「ゆずるに聞かなかったの?」 「あいつが俺に何を教えてくれるって言うんだよ」 「えっ。じゃあ、何も知らないでついて来たの?」  コクコクと頷く直久に数久は明らかに呆れたようである。 「あのね」  数久のゆっくりと話し出した。 【改ページ】  遡ること数百年前、ここいらの土地の村人は山の神に対して、生け贄を捧げていた。  そのおかげで、1年の大半を雪に覆われるこの村でも栄えることができたのだと言う。   「その生け贄は代々、今から行く家の娘がなると決められていたらしいんだ」 「今から行く家って、ペンションか?」 「そうだよ。何でも、生け贄に娘を差し出す代わりに、他の村人から多額の金を受け取っていたらしいんだ。それで現在においても、余るほどの土地を持っているらしいよ。――で、タダあるだけではもったいないからって、ペンションを始めることにしたんだって」 「へー」 「元々あった古い屋敷を改築して、数年前にオープンしたらしいんだけど。……出るんだって」 「出る?」
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