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この時代では、開かずの扉はその名の通りの『開かず』ではなく、鍵さえあれば開くのであるが、その鍵を持たない直久にとって、やはり扉は『開かず』なのである。
どぉ〜したもんだかなぁ〜〜〜。
ツバキが扉の向こう側にいる限り、当然、扉を開けないと会えないのである。
その時、急に直久は目眩を覚えた。
――なんだ?
全身に鳥肌が立つ。憎悪。拒絶。恐怖。
訳は分からないが、本能的にここから逃げなくてはと思う。だが、その思いとは裏腹に、直久の足は一歩も動かない。
どっ、と冷や汗が溢れた。
扉の向こう側から、かすかに少女の笑い声が聞こえる。嘲るような、そんな笑い声だ。
直久の目が扉に釘付けにされる。見たくないのに……。
すーっと、白く美しすぎる手が扉を突き抜けて現れた。続く腕が直久の方に伸ばされる。
がしっ、とその手に捕まれて直久は、バランスを失いその場に尻餅をついた。
引っ張られる!
前の晩、ゆずるがそうされたように、足首をもたれ、ズリズリと扉の方へ引き寄せられていく。
直久は自分の足首からその手を引き離そうと、上半身を折り、手を伸ばした。
直久の手がその白い手に触れた瞬間、青い火花が散り、ジュッという音と共に黒い煙が上がった。
そして、次の瞬間、フッと白い手が消えたのだ。
――な、なんだ?
恐る恐る自分の手のひらを見ると、直久は安堵のため息を深くつく。そこには数久の護符が描かれていた。
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