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暗闇に、キラリと赤い光が見えた気がした。 それがツバキの瞳であったのだと分かるまで、ずいぶんと時間がかかった。 その間に強く手を引かれ、その場に倒れる。
床に打ち付けられ、状況が理解できずに横たわっているアヤメから、ツバキは鍵を奪い取る。そして、扉に駆け寄った。
「ツバキ!」
よろめきながらも、咽が裂けるほど、アヤメは叫ぶ。
どうして? なんで?
少し振り向いたツバキは、ぞっとするほど綺麗な笑みを見せて、アヤメを絶望の淵に陥れた。
パタン。
閉められた扉に鍵がかけられる。 あまりのことに、自分の身に何が起きたのか分からずにいたが、その音に、はっとなり、この部屋唯一の扉に駆け寄る。
「待って! ツバキ、待って!」
何度も、何度も、扉を叩く。
「お願い、出して!出してよ!」
ツバキの部屋――生け贄にされた何人もの少女たちが使っていた部屋だ。
静かな闇に支配された部屋。
怖い。
アヤメは自分の身体をぎゅっと抱きしめた。
嫌、こんなところにいたくない。
ツバキ、どうしてこんなことするの? なんで?
お願いだから出して! お願いよ!
【改ページ】
直久は部屋から出てきた少女を見据えた。アヤメそっくりな少女。
だが、アヤメではない少女。
少女、ツバキは扉に鍵をして、直久に向き直った。
「今までの私の苦しみを、味わって貰わないとね」
ふふっ、と可愛らしい笑みを浮かべるツバキに反して、直久は青ざめる。
ツバキには見えていたのだ。直久の姿が!
ずっと見えていたのか? 見えていて、見えない振りをしていた? 何のために?
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