8.だから絶対、助け出す!

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「あなたをここに呼んだのは、私よ。あなたを必要としていたのは私。べつに、私に協力してくれるのなら、あなたじゃなくても良かったのだけど、結果的にあなたで正解だったかもしれないわね。ありがとう」  そう笑って、ツバキは直久に背を向けて時也の元に駆けだした。取り残された直久はその場に膝を折る。  ――そんな…まさか……。  俺をここに呼んだのが、ツバキだったなんて。  ツバキは知っていたんだ。俺がアヤメを連れ戻すって。アヤメを連れ戻して貰うために、俺を呼んだのだから。  じゃあ、ゆずるを襲った少女の霊はツバキだったのか。  本当は俺ではなく、ゆずるにここに来て貰いたかったのだ。アヤメを連れ戻して貰うために。  ゆずるはちゃんと知っていたから。  いくら双子が同じ顔、同じ声を持っていても、それぞれ一人一人、違う人間だということを。  いや、待てよ。アヤメを連れ戻して貰うために呼んだのなら、もう用はないはずだ。  それなのに、なんで、まだ元の場所に戻れないんだ?  まさか、と思って扉に駆け寄る。 「アヤメさん? ……アヤメさん、聞こえる?」  扉の向こう側に向かって声をかけると、すぐに返事が返ってきた。 「直久? お願い、ここから出して!」  重く頑丈な扉は、鍵無しでは、そうそう簡単には開きそうにはなかった。 「待ってて。鍵を取り戻してくるから」  アヤメのすすり泣く声が聞こえる。  俺を呼んだのがツバキだとしても、俺は必ず守ってやるって、アヤメさんと約束したんだ。  助けてやる、って。だから絶対、助け出す! 「待ってて、アヤメさん。絶対、大丈夫だから」
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